そして、あっという間に3月になり、ひとみがアメリカに旅立つ日がやって来た。


案の定、ひとみは空港ロビーで泣きじゃくり、

『やっぱり行きたくない。慎吾といるぅー!』

と、だだをこねる有り様で…。

何とか宥めすかして、飛行機に乗せることができた。

ひとみが乗った飛行機が無事飛び立ったのを確認すると、

「さ、俺も引っ越しの荷造りをしないとな…」


俺も4月1日付けでようやく係長に昇格、しかも東京本社への異動が決まった。

ひとみがアメリカに旅立ってから1週間後、俺は、住み慣れたマンションに別れを告げた。

車に乗り込んで思い出した。

ここが俺とひとみの出会いの場所…

いつも精魂尽き果てたような顔をしていて、でも何故か気になった。

俺の隣に止まっていたプラッツは今はもうない…

寂しくないと言ったら嘘になる。

でも、ひとみだって慣れない外国で頑張っている。それに比べたら俺なんて…

「俺も頑張るよ、ひとみ…」

アクセルを踏むと、車は走り出した。

俺とひとみはそれぞれの道を歩き始めた。

今度会う時にはお互いどれだけ成長しているのだろう…

ひとみとの再会を楽しみに新天地へと旅立った。