別れ際に高山さんは

『ひとみちゃんもついに決めたんだね。病院継ぐこと…頑張ってね。

さぁ、私はこれから都内までドライブだわ。

じゃ、おふたりさん、お元気で〜!』

そう言うと、足早に駐車場へ向かった。

ひとみが病院…継ぐ…って…?

俺は高山さんの後ろ姿を茫然と見送っていた。

『慎吾?どうしたの?』

ひとみが心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

「…何でもない…たまにはメシ食いに行くか?」

『うんっ!』

ひとみは子供のようにはしゃいで腕に絡みついてきた。

でも…

高山さんの一言で気がついた。

ひとみのこと、

まだ知らないことが多いということを…

『慎吾、私、イタリアンがいいなぁ。』

嬉しそうに目をキラキラ輝かせるひとみに

「給料日前だから、今日はファミレスな!」

厳しい宣告をする俺

『えぇぇぇ〜!!!?そんなぁぁぁ!!!』

激しくがっかりするひとみだけど、

『勤務医もサラリーマンと一緒だから、贅沢できないのよね。』

なんて素直に納得してみたり、

俺達の恋はまだ始まったばかり、

少しずつお互いのことをわかっていけばいい…

「よーし!給料出たら、横浜でイタリアンのフルコースだ!」

大きく出た俺に、

『やったー!でも、割り勘ね…』

笑顔いっぱいのひとみと初夏の訪れを告げる空を見上げた。