「あの青いガラス細工の中には、致死量のヒ素が入っていましてね。青というより、青緑のものですが、家を出て身を寄せた私の実家に、利喜三さんから送られてきました」

「毒……」

 ヒ素、致死量と聞いて、最初は何も感じなかった。歩美にはまだ、状況がよく飲み込めない。

「同封の手紙には毒薬の事が記され、娘の命日に一緒に死んでくれるよう書いてありました。私は、悲しくなって、すぐに送り返したのです」

 ずっと眺めていた色だった。毒という言葉だけが一人歩きし、胸に突き刺さる。

「それがまさか、貴方の元に渡るなんて。コラムを読んで、私は震えました。利喜三さんは、貴方を狙っていたのですよ」

 冬沙子は力強く、歩美の瞳を捉えてそう言った。

 歩美の意思に関係なく、寒気に襲われたようにガタガタと体が震えた。