「さて、あの記事なんですがね」

 歩美が何か言おうとした時、幸いにも、冬沙子の方から切り出してくれた。

「貴方の……、青い鳥を見せて貰えないでしょうか」

 青い鳥と聞いて、歩美の唇が乾く。分かっていたことだが、改めてその言葉が発っせられると、表情に出さないまでも、心穏やかではいられない。

 うっかり踏み潰した朝や、皮膚に滲んだ血液の色が、脳裏に浮かぶ。

「実は誤って壊してしまったんです」

 歩美は絞るような声で言った。

「割れてしまったのですか」

「すみません」


 歩美は青いガラスの欠片を保管していたお守り袋から、そっと取り出した。

 冬沙子はそれを見届けると、両手を器のようにして、大切に受け取った。


「これはね。利喜三さんの私へのプレゼントなんですよ」