神坊歩美、これがアユミの本名である。

 小さい頃は気にも留め無かったが、中学生になる頃になると、ジンボウの名を避けるようになっていた。

 名字の意味するところ……、つまりそれが普通ではないことは、歩美にも分かっていた。

 歩美はそんな束縛に身を置きたくはなかった。

 しがらみから歩美を遠ざけること自体は、祖父も両親も同じ考えであったようだった。

 それほど遠くはなかったが、祖父の仕事関係の人が出入りする家を出て、アユミと両親は別の家に移り住んだ。

 それがちょうど高校二年生の秋だった。

 そろそろ受験勉強に勤しむ時期だが、お陰で家の事情による雑音はなくなった。