同窓会に遅れて着いたアユミを真っ先に見付けて話掛けてくれたのは、やはりシズカだった。

 転校して歩美に、初めて話し掛けてくれた時のことを、今でも思い出す。

 何年経とうが、アユミの知っているシズカはシズカのままだった。


 全員の一通りの近況報告が終わった後、再びシズカと二人になった。そこで、例のマリアの話が出た。

 シズカの言うには、新聞の三面記事に載っていたそうだ。

 踏切り事故で死亡。自殺の可能性も高いとの事で、名前は吉岡利喜三、男だった。


「マリアって、実は男だったのよ」

「ええ! 女装だったんだ」

 これは事件だった。
 アユミがあの時引っ掛かっていた違和感の理由が、この時になってようやく解決した。

「事故はみんなが卒業して、すぐの話よ。誰も気にも止めてなかったけど」

「うん」

「何でも、何日も朝から晩まで、踏み切りの前で突っ立ってたらしいわ。だから警察は、事故だけじゃなく、自殺や他殺の線まで調べていたそうよ」

「そうなんだ。でも、シズカ。私、あの鳥……ずっと持っている」

 アユミはいつかのように、シズカの前に差し出した。

 シズカは顔を近付けて確認すると、今度は顔をしかめて、ゆっくりと両手で押し返した。


「気持ち悪くないの? 捨てなよ」

「ずっと私のお守りでいたから、今更捨てられないよ」

「リキゾウって爺さんのなんか憑いてたら恐いじゃない。怨念とか、情念みたいなものとか」

「シズカ、落ち着いて。ただのガラス細工だよ」

「アユミは相変わらずの、アユミなんだね」

 しかめた顔の眉毛が柔らかく曲がる。シズカは確認するかのように、それでいて嬉しそうに言った。

 親友からそう言われて、アユミも改めて嬉しくなった。