ブラック・ストロベリー






「違うよ、アイツが私の隣じゃないと生きていけないの」



だって、そうでしょう?



ここに向かうあいだ、着拒してから未読を貫き通してたみんなからのメッセージを読んだ。


どれもわたしを説得させるような言葉と、アオイの様子を知らせるものだった。



「知恵熱だすとか、アオイくんもかわいいよな」



私と暮らし始めてから体調なんて一回も崩さなかったくせに、わたしが家を出た次の日に風邪をこじらせたらしい。

マスコミの対応とか、もちろん大変なことばっかりだったのだろう。


それでもメンバーたちは私のせいだってそろえたように言っていた。

そんなこと知ったこっちゃない。



わたしのこと放置した罰だと思えばいい。


反省しただろうか、でもほんのすこしだけ、
弱っているアイツのことを見たかったなんて思ってしまった。




「バカだからね、」



アオイは、馬鹿だとおもう。



せっかく、わたしを手放すチャンスだったのに。

周りを巻き込んで、陸に頼み込んで、自ら引き戻そうとするなんて。




わたしよりもかわいい子だって、美人だって、スタイルがいい人も、歌がうまい人も、頼りになる人も、話が合う人も、あっちの世界のほうがいるに決まってる。




スキャンダルひとつが世間を騒がせる、


そんな脆い世界で、それでも必死に生きてるんだったら、とっととわたしを手放したほうが楽なのに。




そんな世界では恋愛ソングばっか歌ってるくせに、彼女はいないっていうキャラを突き通して。


恋愛より三度の飯がいいなんてばかみたいことインタビューでは答えるし、そのくせ新しい曲ができたら一番に聴かせてくる。




いくらたっても手放そうとしないから、自分から離れようと思ったんだよ。


わたしの幸せはアイツにしか作れないけど、アイツの幸せはたくさんの人にだって作れるんじゃないかって、弱音吐いて逃げ出したんだよ。








なのに、ほんとうにさ。




「 バカ だなあ 」




ステージにライトがついた瞬間、私の声はファンの声にかき消された。