「好きだよ、ヒナセ」
ストレートすぎる、その言葉に不覚にも先ほど嫌な音を立ててなった心臓がきゅ、っと苦しくなった。
どこにも逸らさないその視線が、言われなくても彼が真剣だということを教える。
藤さん、ふたつ上の、私の上司。
だいたいの行動は一緒で、いつも終わりにはかんこひーを差し入れてくれる。
会話の返しが自然で、この人には何でも話してしまうような、すごく気の合う人。
「いつもの無邪気にお客さんとすぐ仲良くなれるヒナセも、たまに強がってムキになってるところも、仕草ひとつひとつも、全部かわいいって思ってたよ」
言葉ひとつひとつが心臓に、刺さってくる。
言葉ばかり求めている私のこと、まるで見透かしてるように。
わたしはずっと、それを求めてた。
言葉でひとつ、好きって、その一言を。
「時間がかかってもいい、まだ振り返ってくれなくてもいい、ゆっくりでいいから俺のことを考えてくれないか」
近すぎず、遠すぎずの距離の取り方さえ、この人は完璧だった。
いつもそうだ、
わたしが助けを求めるときは何も言わずにサポートしてくれて、一人にしてほしかったら、そって席を外してくれる。
こうやって、わたしが欲しかったことばさえ簡単に言ってくれてしまう。
それでも。
開いた唇が震えていることは、自分でもわかっていた。
時間がかかってもいい、そう言われても、答えを出さずにはいれなかった。
すうっと、息を吸った。
視線が絡む。藤さんはわかったように笑った。



