恋占いのある縁結びの場所でお参りをする。
ミキちゃんは誰よりも長くお願い事をしていて、友達にからかわれると相変わらずに耳を真っ赤にして怒っていた。
「ヒナセさん、」
チャレンジしようとした手前、ぎこちなく話しかけてきた彼女に振り返る。
「うん?」
「あの、わたし、余計なことでしたか?」
ぎゅ、と制服のスカートを握りしめて俯いたその子は、遠慮がちに私に問う。
「これからヒナセさん巻き込むようなことしちゃうけどいいですか?ヒナセさんの想いとか勝手な事言ってもう一回話してくださいとか余計なお世話になったりしてませんか?」
一言でバーっと不安を吐き出したのち、さりげなく私の方を見て確かめる。
その仕草が、行動が可愛くて思わず私は笑ってしまった。
「なんで笑うんですか!」
途端に驚いて素っ頓狂な声を上げたと思ったら、自分の声の大きさに驚いたのか慌てて口に手を置いた。
「ごめんごめん、可愛くて」
「もう、真剣に聞いたのに!」
ピンク色の頬をぷくっと膨らましたミキちゃんがかわいくて、頭にぽん、と手を置いた。
「全然、そんなことないよ」
真っ黒なボブヘアのてっぺんを優しくなでると、嬉しそうに優しくはにかんだ。
「正直別れたのは嫌いになったからじゃないし、未練があるなんてこと言えないけど、少しだけ前向きになれたのミキちゃんの勇気のおかげだよ」
「ほんとですか?」
「うん、だから、頑張って」
そのまだ幼い表情ひとつひとつに心を動かされてるのは確かだった。
曲げる気なかった私の決心を、その勇気が少しだけ素直になればよかったって、思わせてくれたんだ。
強がって、わたしを弱くさせるあの着信音が鳴らないように拒否して、気にしないふりして平気で過ごしてるガキは自分だ。
「ヒナセさんの分も、叶えて見せますね」
そういって私に無邪気に笑って見せて、スタートのほうに歩いてくその後ろ姿をわたしは笑顔で見送った。
ミキちゃんなら、きっと大丈夫。
そのまっすぐな思いはきっと、彼にも届くだろう。
私にまで届いた、素直な気持ちが一番大切だってこと、教えてくれたんだ。



