ブラック・ストロベリー





「私じゃ、幸せにできないんだよ」



本人には言えない本当のことを、本人がいないところで、口に出すことは簡単なのに。


逃げてばかりだ、どうしても、素直になんかなれなかった。

いまもむかしも、わたしもアイツも。

本当のことを口に出すことは、苦手だった。


──なんて、今更。


過去にすがったところでもう戻ってこない。

後悔だって、もうしてない。

アイツと過ごした7年間で、わたしは強くなったし、脆くなってしまった。


いまさら、アイツなしじゃ生きていけないなんて、口に出せやしなかった。




「…ヒナセさん、お願いきいてくれますか?」


わたしの話は黙って聞いていたミキちゃんがわたしの制服の袖を軽く握った。



「うん?」

目的の恋占いの石はもう前方に見えていた。


「わたしが恋占いの石チャレンジするとき、ゴールの石のところにいてください」


まっすぐ、その場所を見つめていた。

緊張で、震えているその小さな手は、冷たくて。



「ゴールできたら私、今日の夜の自由時間、自分から誘いに行こうと思ってるんです」


胸に手を置いて、自分の心臓の音を確かめるように深呼吸していた。

でももう、決心したように私のほうをまっすぐ見つめる。



「もし、わたしが成功したら、ヒナセさんももう一度、ちゃんと思ってること、伝えませんか?」


「…え?」


震えた右手に、力がこもった。

それがどうしても私にも伝わって、そのまっすぐさにわたしは逸らすことができなかった。