真田未央奈は、愕然とした...。

自分達の軍が遅れたせいで、後藤伊織が討たれた...。
未央奈は、責任を感じて自害しようとした。

━━その時!!
「死んだら駄目!!」
と、毛利みなみが止めた。

「私のせいで、伊織さんが...。」
と、未央奈は涙ぐんだ。

「今、未央奈が自害したところで、伊織は生き返るの?
未央奈の命が無駄になるだけ...。
どうせなら蓮加様の前で、蓮加様を守りきって死にましょう!!」
みなみは、強く言った。

「みなみさん...。」
未央奈は、みなみを見つめた。

「行くわよ。」
みなみが言った。

「はい。」
未央奈は頷いた。

そして、未央奈とみなみの両軍は、大坂女学園へ引き上げる事にした。

━━そこへ、伊達蘭世の軍が突撃して来た!!

「みなみさん達は、先に大坂女学園へ!!
ここは、私達に任せて下さい!!」
と、未央奈は言った。

━━気を持ち直した、未央奈の軍は強かった。
伊達蘭世の軍を撃破しつつ、みなみや他の豊臣軍を大坂女学園へ撤収させる事へ成功した。

このように自分達が盾になり、味方を逃がす事を《殿(しんがり)》と言う。

未央奈は、蘭世と目が合った。

「仙台女学園二年、伊達蘭世である!!」
蘭世が名乗った。

「大坂女学園一年、真田未央奈である!!」
未央奈は、少し間を置いてから、
「関東の女子高生、百万人いても...“本物”の女子高生は一人もいないようですね。」
と微笑して、学園へと引き上げた。

「真田未央奈...面白い子ね...。」
蘭世も微笑すると、軍を引き上げた。


━━その頃、約五千人の長宗我部祐希の軍は、河内地区八尾(やお)で野戦を繰り広げていた。
川の堤防に身を潜めて、藤堂久美(とうどう・くみ)という女生徒が率いる幕府軍が来たところに、一気に突撃した。
この不意打ちに、藤堂軍は大混乱して壊滅した。

━━しかし、別の幕府軍が藤堂軍の応援に駆けつけた為、祐希達も大坂女学園へ引き上げた...。

豊臣軍も善戦したが、5月6日の戦は、幕府軍優勢で終わった。


━━5月7日、大坂女学園内車庫。

未央奈はバイクを磨いていた。
そこへ、豊臣蓮加がやって来た。

「未央奈さん、バイクの手入れをしてるの?」
と、蓮加が訊いた。

「はい、麻衣様と蓮加様の想いが詰まった、大切なバイクですから。」
と、未央奈は微笑した。

━━蓮加は、バイクのタンクに描かれたマークを見付けた。
昔のお金が三枚ずつ、二列で計六枚並んでいるマークだ。

「これが、未央奈さんの好きなマーク?」
と、蓮加が訊いた。

「はい、《六文銭(ろくもんせん)》というマークで、《不惜身命(ふしゃくしんみょう)》という意味が込められてます。」
と、未央奈は答えた。

「何か、格好良い響きの言葉だね。」
と、蓮加は言った。

「そうですね。」
未央奈は、微笑してから、
「では、行きます...。」
と言って、バイクに乗って行ってしまった...。

「...ん?いつもなら“行ってきます”なのに...?」
蓮加は、首を傾げた。

━━不思議に思った蓮加は、ネットで《六文銭》と《不惜身命》を調べて真っ青になった...。

《六文銭》とは、三途の川の渡し賃の事で、
『無事にあの世へ行けるように』
という意味が込められていた。
《不惜身命》は、
『身や命を捧げて惜しまない』
という意味だったのだ...。

「み、未央奈さん...。」
蓮加は、嫌な予感がしていた...。

━━河内地区の茶臼山(ちゃうすやま)付近に、徳川七瀬が陣を構えているらしいと知った未央奈達の軍は、茶臼山方面に向かった。

(この戦、私が終わらせる…。)
未央奈は、決心していた。

━━長野県信濃地区小県上田女子高天守。

真田美彩は体調不良を理由に、大坂の陣には参戦しなかった。
「未央奈、無事でいてね...。」
美彩は、祈っていた。

茶臼山付近で、毛利みなみ軍、明石美月軍、真田未央奈軍が徳川幕府の軍と衝突した。

未央奈の軍は、約十部隊、一万五千人もの女生徒を撃破した。

そして未央奈は単身、七瀬の陣に突撃した...。

未央奈は、七瀬を発見した。

七瀬の近くでバイクから降りて、

「大坂女学園一年、真田未央奈である!!」
と名乗った。

「駿府女子高三年、徳川...七瀬である...。」
七瀬も名乗った。

二人の美少女が、向い合った...。