「今川との同盟を破棄するわ。」
と、真夏は真田純奈に言った。

━━躑躅ヶ崎女子高天守。
真夏は、純奈と話していた。

「急にどうなされたのですか?」
と、純奈が訊いた。

「優里達の想いを無駄にしない為にも、絶対に京に上るの...。
上らなきゃ...いけないの...。」
真夏は、窓から外を見ながら言った。

強い決心をしたように...。

━━川中島の合戦は、上杉軍、武田軍共に相当のダメージを受けた。
優里達が命懸けで真夏を守ってくれたおかげで、信濃地区のほぼ全域は、真夏の領地になった。

しかし京に上るには、美波からちはるに代わって、更に七瀬が独立して事で、勢力が縮小した今川と、独立したばかりの七瀬、桶狭間の戦いで勝ちはしたが、まだ、尾張地区の一大名である佑美を潰していった方が早いと考えたからである...。

「真夏様。」
と、純奈が訊いた。

「何?」
真夏は純奈を見た。

「北条との同盟は、いかがなさるおつもりですか?」
純奈は訊いた。

真夏は駿河の今川の他に、相模の北条とも同盟を結んでいる。
そして、今川と北条も同盟を結んでいる。

甲斐・相模・駿河が、他の二つの地区と同盟を結んでいる。
それぞれの地区の頭文字を取って、《甲相駿三国同盟(こうそうすんさんごくどうめい)》と呼ばれている。

真夏は、今川との同盟を破棄しようとしていた。

「それは、そのままでいきましょう。」
と、真夏は答えた。

「かしこまりました。」
純奈が言った。


━━その頃、徳川七瀬は清州女子高を訪れていた。

「七瀬、今川から独立したんだね。」
と、佑美が言った。

━━本多花奈の書いたブログを見たようだ。

「はい、家臣の勧めもあり、思い切って独立しました。」
と、七瀬は答えた。

「そっかぁ、頑張ってね。」
と、佑美は微笑んでから、
「で、今日は何の用?」
と訊いた。

「━━実は、佑美さんのお力を借りたくて...。」
と、七瀬は言った。

「私の?何をすればいい?」
と、佑美は訊いた。

「私と...同盟を結んで頂きたいのですが?」
と、七瀬が言う。

「え!?」
と、佑美は目を丸くした。

「━━お助け頂けませんか?」
と、七瀬は訊いた。

「いいよ。」
と、佑美は快諾した。

七瀬は幼馴染だ。
その七瀬が東の三河を押さえてくれるなら、西の斎藤に集中出来る。
佑美にとって、断る理由などない。

佑美は七瀬と同盟を結んだ。
清州女子高で結ばれた同盟なので、《清洲同盟(きよすどうめい)》と呼ばれた。


「ま、真夏さんが...。」
真夏が同盟を破棄した事を知った、ちはるは驚いた。

そして、ちはるは激怒した。

「私の代になった途端に、同盟破棄とは...。」
ちはるは、唇をかみしめて、
「ゆ、許せない...。」
と言った。

これで駿河・遠江の北の甲斐と西の三河は、ちはるの敵になってしまった。
美波から、ちはるの代になった途端の大ピンチである...。

━━しかし、そんなちはるに味方してくれる者がいた...。
相模の北条飛鳥である。
飛鳥は、今川と武田と同盟を組んでいたが、真夏の一方的な今川への同盟破棄に腹を立てて、武田との同盟を破棄したのだ。

新しい同盟が結ばれたり、今までの同盟が破棄になったりと、今川家の政権交代は、各地に波乱を巻き起こしたのである...。