「あっ!」



俺の表情を窺っていた翼がわざとらしい声を出した。それほど俺の表情は酷く荒んだものだったのか。



困った困ったと髪をクシャクシャと乱しながらいつもの表情を取り繕う。



「なんやねん…」




大声をだした翼を鬱陶しそうに見つめる優。



「俺、隼人に連絡入れてねえわ!!朝もひっでえ寝起きだったからそのまま置いてきちまったし。下手して優の家に隼人が行ってたらあの女と鉢合わせだぞ。」


「あらー…それはまっずいねえ」


「悠長な事言ってる場合ちゃうやろ」



3人静かに顔を見合わせ、俺と翼は重い腰を持ち上げる。その時には既に優が屋上のドアへと足を向けているところだった。



隼人かあ、二人が鉢合わせをしたところを想像したら女が無残な姿になるところしか俺には想像出来なかった。



それも良いかもしれないと心の中でふと思う。そうなれば二度とあの場に居座ろうとも思えねえだろうし。



ただ隼人が取り乱すのは厄介だ。古傷を開くのは勘弁してほしい。



屋上のドアを潜り、走り出した優の後を翼が追って駆けて行く。俺はその二人の背中を見つめながらもダラダラと足を動かしてドアを潜った。






あの時のような思いをするのは二度とごめんだ。俺もそうだし翼もそうだし、きっと隼人も、あいつも、勿論優もそう思ってる。



あれは俺らに深い傷を負わせた。一時期誰も笑えなくなるほどの大きく深い傷だった。



けどやっぱり一番辛いのは優だろう。



なのにまた縋りついて、開きかけてる傷口を塞ごうと必死になってる。毒を以て毒を制す、そんな感じなのかねえ。



なんのための仲間だよ。俺に一言、あの女を自分の前から消して欲しいとか、もう二度とあれ関係に繋がる女は見たくない、そう言えば俺は裏からこそこそといくらでも動いてやれるのに。



見えなくなった優に語りかけるように心の中で思ってやったけど、当たり前に言葉は何一つ返ってこなかった。仮に気づいていたとしても、返さないんだろう。



俺も2人の後をゆったりと追いかけた。



隼人はとりあえず取り乱していなければいいなと思う反面、女はどうなっていたって構わないと思いながらも。