「隼人なら大丈夫やから。たぶんもうケロっとしてる。本人曰くあんま覚えてへん言うてたし」
「初めて会った時、物凄く怯えてて。でも今日はすごく…怖い顔してた。」
「隼人は愛理ちゃんには懐いてる。やからもし、隼人が助けを求めてきた時助けられるのは愛理ちゃんしかおらんと思う。」
あたしのすぐ隣へと腰を落とした事でベッドが少しだけ軋む。ゆったりと上下したスプリングの揺れはすぐに止まった。
優の片手があたしの頬をツンと突く。口角付近をつつかれてあたしはきっとらしくない表情をしているに違いないと思った。だって笑えない、上手く。
「やから愛理ちゃんは笑ってて欲しい。隼人やって、愛理ちゃんに頼りたい時に暗い顔してるその顔見たら言えるものも言えへんと思うねん。」
「そう…だよね」
あたしは両手で両頬をそれぞれ掴むと、横に勢いよく引っ張った。「にいー」無理矢理笑った顔を優に見せてみる。
どうだ、このくらい笑えばいいだろうか。上出来だろうか。
あたしの顔を横から凝視した優は「ふはっ」口元を片手で押さえ体を折り曲げ肩を揺らす。おいおい笑ってるだろ、笑い堪えきれて無いんだよ優さん。
「せっかく笑って見せたのに!」
「いやーうん、ええと思うよ」
「全然良かったと思えないんですけれど」
「うんっ、ごめんもっかいやって」
「笑いたいだけでしょ!」
「はははっ、」
失礼しちゃう。でもこんな顔で笑ってもらえるなら本望かもしれない。これで心の内を話してくれるならあたしはいくらだって笑ってやろうじゃないか。
いつも明るい隼人くんの表情が崩れたあの理由は何なのか、今ここで考えても答えは分からないと分かっていて、どうしても考える事を止められなかった。
母さんっ、そこから続く言葉があの時何かあったような気がしてざわざわと胸騒ぎがした。
