でもあの時とはまた状況が違う。



あの時は確かに恐ろしい隼人くんではあったけど、冷静さはあった。だけど今は意識が動転しているのかあたしだって事に全く気づいていない様子だ。



「なんで……っ」



隼人くんはあたしを通して誰かを見ているのか何かを呟いたけど最後まで聞こえなかった。



何?と聞き返す前に隼人くんはあたしの首に両手をかける。



「は、隼人くん」




あたしが名前を呼んでも返事をしてくれない。それどころかその両手に力を込めて首を絞めてきた。



息が出来ない。喉元を圧迫する手に空気が阻まれる。



「は……は…やとくん!!」



隼人くんの両手に手をかける。振りほどこうにも力が違いすぎてビクともしない。




「隼人!!!!」



突如聞こえてきた怒声の声。怒りが混じったその声とともにあたしの首を締め付けていた手がゆるゆると離れていく。





「隼人!お前何やってんだよ!」



見れば翼が隼人くんを後ろから羽交い絞めにしている。急に空気が入ってきた事によってむせ返ったあたしの背中を誰かの手がさすってくれる。顔を上げればそこには空も居た。



「愛理ちゃん大丈夫か!?」



空の顔を確認してすぐ、しゃがみこむようにしてあたしの顔を窺ったのは優。焦って来てくれたのか「はあー」安堵の吐息を吐き出してる。



翼が押さえているにも関わらず尚も暴れ続ける隼人くんが視界の隅に映った。


「隼人しっかりしろや!」



優が隼人くんの肩を揺らしているけど隼人くんは今だに恐ろしい顔をしている。