いいねえ、皆今日は気持ちよく朝が迎えられるよ。お味噌汁の味を確かめようとお玉に掬ったお汁に口をつけようとした瞬間――――。




「―――っ!」




廊下の奥から微かな悲鳴が聞こえてきた。驚いてお玉にすくったお汁で唇を火傷してしまった。




だけど今の声は杏ちゃんだ。まさか誰かを起こしに行って襲われたんじゃあるまいな!いやありえるぞ、それが空の部屋なら尚ありえる事だぞ。



あたしはコンロの火をガチンと乱暴に捻り止め、廊下に飛び出して声のした方を探す。視線の中に飛び込んできたのは忘れもしないあの部屋の扉が開いている光景。



そこは隼人くんの部屋だ。



杏ちゃんそこは!!何故あたしも言わなかったんだ、すっかり忘れていた。あたしの馬鹿野郎め。寝起きだけ魔王降臨する隼人くんの部屋に急いで飛び込む。




「杏ちゃん!!」



部屋の中、杏ちゃんは床に座りこんで隼人くんの顔を震えながら凝視していた。たぶん動けなかったに違いない。



だって隼人くんの顔は寝起きのあの時に比べてもっと酷い。杏ちゃんの横にはなぎ倒されたテーブルと割れたコップ。





「隼人くんおちち、落ち着くんだ!」



隼人くんがフラリとベッドから腰を上げる。ユラリと持ち上がったのは隼人くんの拳だった。それが今にも杏ちゃんに振り落とされそうだったので、あたしは隼人くんへと飛びかかった。



そのまま2人でベッドに倒れこむ。始めはあたしが押し倒す形になって隼人くんを押さえていたが次の瞬間にはグルリと見えていた景色が反転し、天井とあたしの上に馬乗りになる隼人くんが見えた。