2人で雨の中傘も差さずに走って帰った。



優のマンションに着いてすぐ、有無を言わさずあたしは脱衣所に押し込まれたのでいつもより何倍も早くお風呂に入って優と交代をした。



優の方がずっと濡れて寒かったと思うのに。



リビングの黒いソファーで待っていると優もいつもより早めにお風呂を上がってリビングにやってきた。何となく緊張して待っていたのに、リビングにやってきた優はいつも通りな様子で拍子抜けする。



あたしの目の前のソファーにゆっくりと腰を落とすと「さて」話を切り出すようにして片膝を抱えた。



「俺らの今起きてること。ちゃんと話す。」


「うん」


「やけど今日だけで全部話すってのはちょっと難しい話やねん。色々な事がありすぎて」


「それは何となく分かります」



複雑な事は察していた。だから今日一日で全部を知れるだなんて図々しい事は思ってない。優が話せる程度に話してくれればいいのだ。



「とりあえず俺の話だけしてもええ?」


「はい」



姿勢を正すようにして耳を傾ける。そんなあたしを見て、優はクスリと微笑んだ。せっかくの緊張していたムードがまた崩れた。そこも良い所なんだけれど。




「俺が北原に入ったばっかりの時3年やった関さん(せきさん)って言う人が北原のリーダーやってたんやけど」


「関さん…」


「そう、関 蓮斗(せき れんと)って人やねん。」


「ふむ…?」


「どうしたん?」


「ああ、いやいや何かどこかで聞いた事あるような気がしたんだけどたぶん気のせいだと思う」


「もしかしたら会うた事あるかもしれんよ。関さん、今はアクセサリーショップの店長やから。愛理ちゃんがその店に行ってたらきっと会ってる」