恋愛白書

「何やってんだよ。公衆の面前で」


コンビニから出てきた人に言われる。


あたしはその声に弾かれたように神谷くんから離れた。

だって。
その声は丈の声だってすぐわかったから。


丈の声が聞こえた瞬間、引き戻されてしまう。


「…丈」

「変わり身早いんだな。お前」


丈がふっと笑う。


「…そんなこと」

「じゃ」


あたしの話も聞かずに丈は歩いていく。


変わり身早い?
でもなんでそんなこと。

丈に言われるの。


「ごめん。あたしも帰る」


あたしはそれだけ言って走り出す。