小学生の頃に寄り道をしたのもこの裏山だった。

 わたしが退屈だと不満をもらしたら、奏多が秘密基地を作ろうと言ってくれた。

 わたしの胸は踊った。

 選んだ場所がこの裏山だ。

 最初は悪いことをしているような気持ちだったけれど、奏多と一緒だったから、それもワクワクとドキドキに変わっていったんだ。

 
 「懐かしいね。わたし、この場所好きだよ」

 基地とは呼べないけれど、ふたりだけの秘密の場所だったから。

 「ずっとここにいてぇな……」

 奏多が染々と言ってわたしへ視線を向ける。


 まるで、花が開くような儚げな笑みを浮かべていた。


 奏多を見ていたわたしは早鐘を打つような鼓動の音に思わず目線を逸らした。
 
 頬が熱くなったのは、夏のせいだけじゃないかもしれない。

 「……でもさ、やりたいことは他にもあるんでしょ? 早く教えてよ」

 「これも、そのうちのひとつだから」