「何回も教えてもらったんだけどね……」

 悔しさにも似た気持ちが声となった。

 さっきから何枚も畳んでいるけどシャツの一枚も母さんのように上手く畳めないなんて、情けない。

 「これじゃあ母さんに怒られちゃうね。教えてもらってるときの母さん、鬼ババだったもん」


 じっと見張るようにわたしの後ろにいた母さん。終わると目だけで確認してしまうように指示を出した。 

 褒めてもくれなかった。鬼ババだ。


 わたしが苦笑いするとお父さんが息を吐くように言った。

 「そうか。鬼ババか」
 
 父さんは怒ったりしない。

 ただ、眉毛の下がった顔とその声は寂しさを潜めているようだった。 

 わたしは、そんなお父さんから目を逸らした。


 結局、シャツは一枚もピシッと畳めなかった。