「かな、た……わたし、刺されたの?」

 身体が横を向いたまま動かせない。

 痛みと重苦しさのある場所を探して恐る恐る手を当てる。

 ぬめりとした生温くて気持ちの悪い感触。それがお腹の辺り全部に浸透していく感じがした。


 「なんで……嘘だろ! ナツっ!」

 震える泣き声で奏多が叫んだ。

 地面に膝をついた奏多の顔がくちゃくちゃに歪んでいく。
 


 「そっちに行くな! 通り魔が出たぞ……っ!」

 住人が叫びを上げる声を聞いてわたしは思った。

 ああ、通り魔は、まだ捕まってなかったんだった。

 
 陸が空き地で言ってたよね。

 わたしが想像して滑稽だと笑った通り魔の男。


 わたしなら捕まりたくないから遠くへ逃げると考えたけど、その男はずっとこの町に潜んでいたのかもしれない。


 わたしが知らないだけで。

 凛子にも、気を付けてと教えてもらっていたのにね。

 ニュースだってうんざりするくらい流れていた。