いくら呼んだってもう会えない。
それでも、みっともないくらい嗚咽をあげてわたしは泣いた。
止まらなかった。
「ナツが見舞いに行かなくなってから、俺がひとりで行ったときに、大人になったら渡してほしいって頼まれてたんだ……」
静かな声で奏多が言った。
頼んでもいないのに母さんの見舞いに行く奏多を恨めしく思ったこともある。ありがた迷惑だ、おせっかいだ、と。
つくづく自分が嫌になる……。
奏多は、そんなわたしの頭をそっと撫でる。
優しくて、温かい奏多の手。
声にならないわたしは心のなかで奏多に問いかける。
事故に遭う前、奏多はわたしに母さんのノートを渡そうとしてくれたんだね。
逃げ出したのは紛れもないわたし自身だ。
ごめん、奏多。ごめんね。
「ありがとう……」
何度も嗚咽がこみ上げてくるせいで奏多に聞こえたかはわからない。
奏多は、微かに笑みを浮かべた。
やっぱり奏多のその笑窪は、星が滲んだようにわたしには映る。



