ずっと褒めてほしかった。
あの頃のわたしは出来が悪かったろう。ふてぶてしかったろう。可愛くなかっただろう。
それでも、わたしは母さんに褒めてほしくて必死だった。
母さんはわかっていた。
ずっとわたしを見ていてくれた。
『死んでも、あなたの母さんです』
ああ、これは母さんの別れの言葉だ。
わたしは頷く。母さんを思って頷くとボロボロと涙がノートに零れ落ちて染みを作る。
最後のページを捲る。
『なっちゃん。よく出来ました。頑張ったね』
母さんの声が耳に蘇る。
柔らかくて優しい母さんの声。
ずっとそう呼んでほしかった。
母さんにそう呼ばれることが、大好きだった。
ああ、わたしは。
わたしはこんなにも母さんに愛されていた。
どれだけ母さんがわたしを大切に思っていたか。
もっと怒ってほしかった。
可愛くない態度をとるわたしを厳しく叱ってほしかった。
母さんを避けてきたわたしに目を見て話せと言ってほしかった。
母さんはいつもわたしのことばっかりだ。
死ぬまで、わたしのことを考えていた。
もっと自分のことを心配すればいい、もっと自分のために残された時間を使えばいい。
母さんは、もっと自分に優しくしていいのに。
どうして……
どうして、わたしは一番大切なことを見失ってしまっていたのだろう。
母さん、母さん、母さん。
「母さん……!」
泣きながら空に叫んだ。



