『夏希。あなたが笑う顔、怒る顔。大人になっていく姿。あなたの成長を見ていきたい。ずっとあなたの隣にいたい。夏希と生きていきたい』
息が詰まった。もうダメだ。
涙がこみ上げてくる。
かくしていた、見せようとせずに耐えてきた、母さんの心の声に。
鼻の奥が痺れて、母さんが綴った文字が滲んでいく。
『母さんはあなたに厳しくしました。きっと母さんが嫌いだったでしょう。母さんはあなたに立派な大人になってほしい。母さんが教えられることは全て残したい。いつかあなたがお嫁にいくとき、母さんはいないのですから』
母さんの文字から愛しさが滲んでいるような気がした。
わたしは頬を拭う。何度も何度も。
それでも母さんの文字が涙で濡れてしまう。
『父さんへ。あの子を褒めてあげてくださいね。やれば出来る子です。あの子を褒めてやれるのも、頭を撫でてやれるのも、これからはあなただけです。夏希は頑張りましたよ』



