【完】八月は、きみのかくしごと



 『夏希は不器用だからてこずっていたけれど、洗濯物、上手に畳めましたね。これからも、父さんのシャツの洗濯、お願いしますね』


 今でも母さんのように綺麗に畳めない。

 わたしの後ろで見守っていた母さんを鬼ババと言ったわたし。

 母さんは許してくれるだろうか。


 『トキさんが見舞いに来てくれました。あなたのことを褒めていましたよ。買い物をして、夕飯の支度をして、父さんの手伝いをちゃんとしているそうですね。当たり前のことが出来る、それはとても立派です』


 母さんの字が震えている。


 『夏希。奏多くんと見舞いに来てくれてありがとう。でも、母さんはあなたに見舞いに来てほしくなかった。抱き締めてしまいそうだったから。抱き締めて、あなたを離したくなくなってしまう。あなたと過ごせる時間が限れている。それが悔しくて、悲しい。寂しい。とても』


 喉元が焼けるように熱い。

 震える指でページを捲る。