【完】八月は、きみのかくしごと



 だけど奏多は首を振った。

 これは計画書じゃないよ。そう否定するように。

 「あとひとつだけ。一番やりたいことがまだ残ってるんだ」

 「だったらやろうよ。てか、一番最初にやればよかったのに」

 「だよな。これは俺がやらなきゃいけないことだもんな」

 独り言のように呟いた。

 言い聞かせているようにも感じた。

 「本当は今じゃないんだけど。もっと先の、未来の夏希に会ったときにって思ってたんだけど」

 ーーー未来のわたし?


 奏多がわたしを見る。真っ直ぐに。

 思わずわたしは背筋を伸ばした。

 「読んでほしい」

 奏多がノートを差し出す。

 そして淡い笑みを浮かべて言った。

 
 「ナツのお母さんからだよ」


 胸が早鐘のように打つ。

 ……母さんから?