「夏希が中学生に上がる頃だった。母さん、二年もてばいいってね。お医者さんが言っていたんだ」
二年。母さんの命の期限。
知らなかった。
母さんに残された時間がそんな前から決められていたなんて。
「限界まで入院はしないって、母さんが……」
その言葉に頬を張られた気がした。
わたしは余程ひどい顔をしていたのだろう。
ゆっくりと顔を上げるとお父さんの顔が心配そうに曇り出した。
「夏希には言わないでほしいって頼まれてさ。あの子、きっと毎日泣いてしまいそうだからねって」
母さんがそう頼んだのだと。
「その晩、母さんはうんと泣いて、覚悟を決めたんだよ。それは、とても悔しかっただろう……」
と、仏壇の母さんの写真を見つめて熱くなった目頭を押さえた。



