【完】八月は、きみのかくしごと



 「夏希が中学生に上がる頃だった。母さん、二年もてばいいってね。お医者さんが言っていたんだ」

 二年。母さんの命の期限。

 知らなかった。

 母さんに残された時間がそんな前から決められていたなんて。

 「限界まで入院はしないって、母さんが……」

 その言葉に頬を張られた気がした。

 わたしは余程ひどい顔をしていたのだろう。

 ゆっくりと顔を上げるとお父さんの顔が心配そうに曇り出した。

 「夏希には言わないでほしいって頼まれてさ。あの子、きっと毎日泣いてしまいそうだからねって」

 母さんがそう頼んだのだと。

 「その晩、母さんはうんと泣いて、覚悟を決めたんだよ。それは、とても悔しかっただろう……」

 と、仏壇の母さんの写真を見つめて熱くなった目頭を押さえた。