【完】八月は、きみのかくしごと



 中学生活のなかにお父さんの手伝いも家のこともスムーズに取り入れることが出来るようになった。

 だけど、

 『当たり前だから。それにね、今後も続けなきゃ意味がないのよ。わかってるの?』

 母さんはただの一度だって褒めてくれなかった。

 それは確かに当然かもしれない。

 中学生なんだからそれくらい出来て当たり前だ。


 でも、わたしは褒めてほしかった。

 母さんに笑ってほしかった。

 もっと子供だった頃のように「なっちゃん偉いね」と言ってほしかった。

 ただ、それだけでよかった。


 「母さんは、寂しかったんだよ。本当はずっとひとりで我慢していたからね」

 膝の上で固めた拳をギュッと握る。震えていた。

 ダメだ。なんの声も出てこない。

 「母さんのことが嫌いかい?」


 お父さんの声が悲しくて痛い。

 悲しみを潜めているのだろうけどわたしにはひしひしと伝わる。

 お父さんはどんな思いでその言葉を口にしたのだろう。