写真のなかの母さんと向き合っている。
そんな様子だった。
「夏希」
静かな声だった。
お父さんが唐突に顔を上げた。
「そろそろ母さんのことを話さないか」
真っ直ぐな眼差しがそこにあった。
わたしの首筋が緊張していく。
母さんのことなら度々お父さんが話していたじゃない。
「え……?」
突然のことに、なんて言ったらいいかわからなくて、それだけしか発することが出来なかった。
父さんを傷つけてしまう夜は今日なのかもしれない、と思う。
どくり、と鼓動が速くなった。
「夏希はあんまり話してくれないからね。母さんのこと。忘れちゃったら、母さん、寂しがると思うんだよね」
寂しい……。母さんが?



