テレビをつけると東京のテーマパークが写し出されており、満員電車のように人で溢れていた。なにがそんなに楽しいのか、人々はみんな笑顔に満ちていた。

 地元の番組に切り替える。

 通り魔のニュースは前ほど頻繁に報道されていないみたい。

 犯人が捕まったなら、凛子が帰国したら教えてあげよう。

 怖がっていたし、きっと安心するだろう。


 「……ダメだ」

 他のことを頭に入れてもちっとも気は紛れない。

 お父さんを傷つけてしまうことはもちろん避けたい。


 でも、なにもここまで動揺することじゃない。
 
 じゃあ、どうして? 言い聞かせ自問自答を繰り返す。


 お父さんは傷ついた顔をしてものすごく怒っていた。

 わたしが傷つけた。それが悲しかったから?


 違う。きっと、わたしは大事なことに気づいてない。


 まだ、気づけない。


 「お父さん……わたし、やっぱりもう出るね」

 「あれ? そーめんはいいのか?」

 「ごめん。いいや。お湯、沸いてるから早い内に使ってね」