ーーーその夏、幼馴染みが言った


 『俺、ナツに言わなきゃいけないことがあるんだ』

 熱い夏の陽射しに溶けてしまいそうな儚い笑みを浮かべている。

 初めて見る奏多の表情に途端に胸が騒いだ。

 『明日でいいじゃん。どうせ明日も会えるし、明日聞くよ』

 『明日じゃダメだよ。今じゃなきゃ、ダメなんだよ』
 
 悲しげなその顔を見ていたらたまらなく泣きそうになった。  
 
 奏多がわたしになにを言い出すのか考えると怖くなった。 

 だから、わたしはその場を逃げ出した。
 
 『夏希!』

 無我夢中で走った。とにかくわたしは逃げたかったのだ。
   
 だけど次の瞬間には、身体が潰れたような衝撃を全身に感じた。
   
 ドンッ、となにかが爆発するような鈍い音が聞こえたような気がする。
 

 視界が遮断される。

 
 そのあとのことは、覚えていない。