(一)

休日でも、私の起床時間は仕事時のものと変わらない。

図書館『フォレスト』のスタッフは通いか住み込みか選択出きるが、大概の人は住み込みを選ぶ。出勤の利便性はもとより、古城をモチーフにした建物だけあって、部屋の内装もまた然り。『訪問』によって、様々な絵本の世界に行って見慣れてはいるものの、こうした貴族が住むような場所で実際寝泊まり出きるのは魅力的な話だ。

一般利用者のための宿泊施設もまたバロック様式を基本とした内装だが、職員寮に関しては『住む』ことが前提のため八畳のワンルームに、バス・トイレ、キッチンもついている。

部屋数に限りがあるため、相部屋となることも少なくなく、本来ならば一人部屋を貰えるまで最低三年はかかるというのに。思わぬ昇進により、この部屋を与えられた。

自身に不相応な役割だと嘆く一方でこんな特典に喜びも感じる現金な自分を噛み締めつつ、カーテンを開けた。

窓を開けずとも清々しさが感じられる青空は、天候操作の聖霊のおかげか。しばらくは晴天にしてくれると天気予報で言っていた。時折、聖霊のいたずらで『にわか雨』なるもののあるけど、図書館『フォレスト』を担当する聖霊たちは真面目な子たちが多いのでそれほど心配することもない。

窓を解放すれば、心地良い風と共にーー

「オハヨー」
「オハヨーゴザマー」
「ゴザイマスー」

もふもふの真っ白い綿毛たちが部屋に飛び込んできた。

私が休日でも、惰眠を貪らないのはこのためだ。何せ、こんなにも可愛い子たちが私の目覚めを毎日待っていてくれるのだから!

「はいはい、おはようございます。今日はチョコレートですよー」

お皿にゲノゲさんたちが食べやすいよう砕いておいたチョコレートを盛り付ければ、わーいわーいと喜び頬張る愛らしい聖霊さん。これが母性本能というものかとしみじみ思うほどに癒される光景だった。

最初は三匹だったゲノゲさんも、チョコレートの匂いにつられたのかあれよあれよと増えていく。追加でチョコレートを足しつつ、ふと、『リーディングルーム』に目が行った。


五階の窓から眺める景色の大半を占めるドーム状の建物に、図書館のスタッフたちが向かっていく。一般利用者が『訪問』する前の点検がため、早くに出勤するスタッフたち。引き締まりがないような顔をしているのは、今までこの点検に何の問題もなかったからだろう。

絵本に『訪問』出来た、『退出』出来た。異常なし。たったこれだけの作業に問題が起こるわけもなく、上位聖霊『ブック』の奇跡による賜物(訪問)は変わることなく存在している。

念のためにこしたことはない点検だと司書長自らが言っていたため、毎日欠かしたことのない日課にーーそういえば、明日の早番(点検作業)は私だったかと何とも複雑な思いに駆られてしまう。

「ゴチソウサマー」
「サマー」

チョコレートを食べ終えたゲノゲさんが、ぴとりと私の体にくっついてくる。撫でていれば、別の子がまたぴとり、ぴとりと、これは全て懇切丁寧に撫でなければならないということだと察します。