ごめんなさい、とすぐさま十色に駆け寄って抱きつく。
十色はわたしを抱きしめ返してくれて、怒ってないのかと気を抜いたのも一瞬。
「……処分は近いうちに報告するから」
十色のその言葉に、さあっと、血の気が引く。
処分、って。十色はわたしの言葉も、千瀬の言葉も信じてくれてないってことでしょ?
「……乃詠、さん、」
どうしようもなくて乃詠さんを見上げたら、彼は困ったように微笑んだだけだった。
一度決めたら決して答えを変えない十色の考えに意見する気は、まるでない。
「莉胡、あとで部屋においで。
……莉胡の話だけはとりあえず聞く。聞いてあげるけど、俺が意見を変えるつもりは一切ないから、覚悟しといて」
「……十色」
わたしをいつも大切にしてくれる、愛でるような視線は今日も変わらないのに。
十色の瞳は冷たくて、怖かった。──誰よりも月霞を大事にしていた千瀬の方を見るのが怖くて、世界が、またたく間に褪せていくのを感じる。
「お願い十色。
……わたしは処分を受けてもいい。だから、千瀬だけは、許してあげて」
あとで十色の部屋に行った時、わたしはすべて事情を説明した。
わたしがしつこく聞いたことが悪かったんだと。それを理解した上で、処分はわたしだけにしてほしいと。何度も何度も、頼み込んだ。
だけど十色は、首を縦には振ってくれなかった。
「夏川 莉胡。七星 千瀬。
──以上2名を、月霞から追放する」
月霞の全員の前で、告げられたそれ。
事故だったんですよね?と説得してくれたメンバーも何人もいた。だけど、わたしたちの処分は改善されることなんてなくて。
真冬のある日、わたしは自分の居場所と同時に。
──千瀬の居場所までもを、奪ってしまった。



