「もし、東と西が対立して……

西が、負けるようなことになったら。千瀬の立場が、いちばん最善になるようにしてほしいの」



『……お前なあ』



「無茶言ってるのはわかってる。

……でも千瀬には、無事でいてほしい」



あからさまな、ミヤケのため息。

わたしだって本当なら、こんなリスクの伴うようなことはしたくない。けれど十色が西の人間に手を出したならもう、避けて通ることの出来ない道だ。



『違ぇよ、俺が言いたいのは。

……お前、本気で西のトップのこと好きじゃねーだろ』



「………」



『話が、西の負け前提じゃねーか。

自分の男のこと信じてないんだろ?』




……適わない、な。

西のメンバーと関わるようになった時、いちばんに仲良くなったのはトモだった。最後に知り合ったから、緊張がだいぶ解けてたってこともあるだろうけど。



雰囲気が、すごく似てる。

トモとミヤケは、痛いぐらい、似てる。



「……わたしが本気になるのは、

はじめからたったひとりだけよ」



『んじゃあ、東もどってこいよ。

あの人お前のこと取り戻すために西に喧嘩吹っかけてんだぞ』



「それは無理」



十色は、たとえわたしがいま東にもどったとしても、また彼女にしてくれることはない。

自分から寄ってくる女には、微塵も興味がない。──追う価値のある女だけを、手に入れる。



十色は、そういう人だ。

だから東西で対立してわたしをふたたび手に入れてようやく、また彼女にしようと思うんだろう。