ずっとそんなことを、思ってたの?
わたしが月霞を追放されたときだって。わたしのせいなのに、自分が追放されたことには何も言わず、いまもわたしと一緒にいてくれるただひとりの幼なじみ。
そんな大切な千瀬のことを。
用無しだなんて思うことは、絶対にない。
「わがままなのは俺の方だからだよ」
「………」
「ずっと一緒にいた莉胡を……
ほかの男にたやすく取られる俺の気持ちわかる?」
「……千瀬」
こつん、と、額が重なり合う。
至近距離で見つめる千瀬の瞳は、いつだってまっすぐで、綺麗だ。
「莉胡に彼氏ができるのはじめてじゃないし……
わかってるけど、やっぱり、幼なじみを簡単に取られたくないって気持ちもあるよ」
千瀬の手が、するりと流れ落ちた髪を耳にかけてくれる。
視線が絡み合うと、彼はめずらしく困ったように笑って。その儚さが強く印象に残るから、胸に痛い。
「……わたしのこと、好き?」
「うん、好きだよ。
莉胡だって、俺のこと好きでしょ」
「……うん、だいすき」
だってわたしたちは、幼なじみだから。
それ以上でもそれ以下でもない。──結局。
あのとき言えなかったことに、
いまもまだ、後悔が、募るだけだ。



