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「……美味しい?」



わたしの顔色をどこか伺うような幼なじみに、うん、と答えるわたし。

──違う、とふたりきりの時間を強引に終えてから、数時間。のんびりしてこいとアルくんに背を押されて、海の家で約束通りのかき氷。



すこし前の会話の名残なのか、千瀬はやっぱりわたしの顔色を伺ってる。

そんなことしなくていいのにと思いながらも口に出せないのは、まだ、もやもやしてるからだ。



半分こ、と言ったのに両方わたしの前に置かれてるし。

しかもわがままを言ったのはわたしなのに千瀬が奢ってくれたから、ちょっとだけ申し訳ないというか、なんというか。



「莉胡は甘いもの食べてるときが、

いちばんしあわせそうな顔してるよね」



「……そうかな」



前に、織春にも言われたような気がするけど。

たしかに甘いものは好きだし、しあわせだ。しゃり、と噛み砕くより先に口の中で溶ける冷たい氷。視線を上げて千瀬を見つめると、図ったように絡んで、心臓が跳ねる。




「……はじめてこんなに仲直りするのに期間が空いたからかな」



「、」



「……なんとなく気まずいって思ってるでしょ」



ずばり。言い当てられて、へらりと笑ってみせる。

何が、と言われたらわからないけれど、なんとなく気まずい。わたしだけじゃなくて、お互いに。



「……なんでだろうね」



喧嘩する前と、変わらないのに。

その気まずさを拭い切れないのは、どうしてだろう。──千瀬が彼女と、好きじゃないのに付き合っていることを知って、いやだ、って思ったのは。



よくわからない理由で幼なじみを取らないで、なんて。

そんな変な感情が、浮かんでしまったのは。