冷たいってわかってるのに、どうしてわざわざ俺に試させるのか。

嫌だよと言えば「けち」とつぶやく莉胡。かき氷食べないよと約束を取り消そうとしたら途端に謝ってくるのがかわいくて自然と笑みが漏れた。



「うそだよ。

あんまり冷たいとこいたら身体冷えるから」



「はーい」



つい1時間ぐらい前は泣いてたのに。

それは俺のせいなんだけど、仲直りしたらすっかり元通りで、でもこの距離感は俺と莉胡だけの特別なもの。



「……あっ、ねえ千瀬、

由真ちゃん放ってわたしといていいの?」



「ん?……いいんじゃない?

由真が好きなの、俺じゃなくて春だよ」



視線を向ければ、春の隣で何かしゃべってる由真。

春だって満更でもなさそうだし、莉胡が俺といてもめずらしく何も言ってこないし。声をかけられるまでは、放っておいても大丈夫だと思う。




「え……?

由真ちゃんが好きなのは織春なの……?」



「そ。

だから莉胡が由真に遠慮することはないよ」



そう言ったのに。

なぜか憂いを帯びた表情で、俺を見上げる莉胡。なに?と聞くより早く、つながれた手に莉胡が力を込める。



「……なんで、付き合ってる、の?」



「え?」



「なんで由真ちゃんと……付き合ってるの?

千瀬が一方的に、好きってこと……?」



春を取り戻したい由真に協力してるだけだよ、なんて。

仮にも春の彼女である莉胡に、そんなことは言えるわけがなくて。