【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-




──時間になったようで、チャイムが鳴る。

ふっと笑った春の隣。自分の席であるそこに腰掛ければ、「モーニングコールしてやろうか?」と意地悪に笑うから、思わず頬をふくらませた。



「そういう意地悪言わないで。

……でも、できることならお願いしたいぐらい」



「断るわけじゃないんだな」



「本当に起きるの苦手なの」



千瀬はもう慣れっこだろうけど、とにかくわたしは寝起きが悪くて遅刻常習犯だ。

十色とのデートにだって、何度遅刻しそうになったことか。



「起こしてほしいなら電話もしてやるし、

なんなら毎朝迎えに行ってやるよ」



そう言って頭を撫でるこの人は、そう。……どうやら、わたしのことを、随分好いてくれているらしい。

というか、もう、正直に言おう。




「幼なじみの千瀬がずるく思えるな」



「……ヤキモチですか」



「ふ。さあ?……どっちだと思う?」



──わたしはすこし前に、春本人から告白されている。

正直付き合うとか考えられなくて、いまはまだ保留中になっているけれど、もしかしてわたしって暴走族の総長に好かれるオーラでも出してるんだろうか。



……好きだ、とは言われたけど。

もし万が一、わたしが月霞の元メンバーであることを知っても、春はわたしを好きでいてくれるんだろうかと、ときどき考えることがある。



「互いの家を簡単に行き来できんのも、

お前のそばにいられるのも、正直ずるいと思ってる」



余裕げであでやかな笑みを浮かべた春が、わたしの耳元で「妬くに決まってるだろ?」とささやいてくるけれど。

……どう見ても、妬いてるようには見えないです春さん。