さくら、さくら

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「おじゃましま~す!」

私の部屋に案内して、お茶を出す。

部屋にはまだ荷物をおろしきれていないダンボールが部屋のすみにニ、三個ある。

…………今日は碧帰ったら片付けとこう。

「麗ちゃんの家広いんだね~!」

確かに広いかも。

一人暮らしだから余計かな?

リビングと、キッチンが一緒になった大きい部屋以外は私の部屋含めてだいたい五、六部屋くらいあるしね。

「麗ちゃん!何か話そ!」

「うん!」

それから、碧とはいろんなことを話した。

秋には文化祭や体育祭があって毎年大盛り上がりだよ、とか、学校の七不思議ならぬ八不思議がある、とか、昨日の五人が学校の女子に凄く人気で、ひとりひとりに親衛隊やファンクラブがあること、とか、碧の好きな人はひとつ年上の先輩だ、とかいろんな話をした。

「あ、もうそろそろ6時だ!暗くなってきちゃった!私帰らないと!」

「そっか~。じゃあバイバイだね。」

「うん!でも、麗ちゃんの隣の神社にお参りだけしてみていいかなぁ?」

「うん!じゃあ私も一緒にお参り行くよ!」

「うん!」

ということで、神社に来た。

この神社の名前は栂尾神社《トガノオジンジャ》。

「ご縁があるから五円ね!」

「じゃあ私も五円にしよっと。」

そう言ってお賽銭箱に五円玉をいれて、手を合わせ、頭を下げる。

すると、頭上から声が聞こえてきた。

「嬢ちゃんたちご苦労なこったな!神様にお参りなんてよ!」

「ん?」

誰だろう、と思って頭を上げて声のした方を見る。

それは、賽銭箱にもたれかかって、ケラケラ笑っている。

見た感じ、私達より歳上の人か、同い年ぐらい。

ショートの茶髪、右耳に金色のピアスに変わった着物を着ている。

それにこの顔…………どっかで見たような……?誰かに似ている。

「麗ちゃん、どうしたの?」

「ううん、なにもないよ。」

碧には見えていないのかなー?

ってことはコイツ霊的な何かだな。

それによく見ると、額から角が二本はえている。

とりあえず碧がいるし、見えないフリでもしとこう。

「じゃあ、私帰るね!麗ちゃんありがとー!バイバイ!」

「バイバーイ」

小さくなっていく碧の背中に向かって手をふる。

さーて、あの霊的な何か……っていっても妖怪とかの類なんだろうけど、まだお賽銭箱に寄りかかっている。

うーん、ほっとこう。

きっと、ああいうのはほっておけば知らないうちにいなくなるだろうしね。