【飛鳥side】

麗華が妖魔界に行った次の日。

真っ暗闇夜を月明かりが明るいほどに照らす満月の夜。

俺はあるところに向かっていた。

「飛鳥か。」

桜の精霊、妖魔界の門番である桜のもとへやって来た。

「こうしてまともに顔を会わせるのは久しいな。」

「ああ。」

少しの沈黙。

冷たい夜風が二人の間を通り抜ける。

「少し前に私に雀宮山のことは任せた、と山のことを放り出して私に押し付けていったのは麗華を守れとぬらりひょん様から命令を受けたからか?」

「まぁ、そうなるのぉ。」

わしは前まで雀宮山の主をしていた。

しかし、ぬらりひょん様から玉巫女の麗華を守るようにと命令を受けてから、桜に山の主というのを押し付けるように頼んだ。

彼女は700年以上生き続けた桜の大木の精霊だ。

そのせいか、彼女とは付き合いが長い。

「しかし、麗華とはあの麗華か?」

ゆっくりとうなずく。

「そうか。しかし驚いたものだ。あの泣き虫だった麗華が今はあんなに美しい娘に成長していたとは。人間の時間とは早いものだ。きっと彼女は忘れているだろうが、今思い出せばとても懐かしいものだ。」

「うむ。そうだ……あれは10年くらい前だったかのぉ……。」