勇ましく、
常に前へと進み国王に絶対的な忠誠を誓っていた応竜は勇を司る荒の玉を、
とても賢く分析力に長けていた鳳凰は智を司る奇の玉を、
麒麟のように平和を強く望み妖怪や人間の壁を越えて誰とでも親しくすることのできた霊亀は親を司る和の玉を、
そして平和と生命と人間をこよなく愛し、
思いやりに溢れていた彼は愛を司る幸の玉を生み出した。

だが、麒麟はどうしても人間界から離れることができなかった。

それほどまでにこの世界を愛していたからだ。

麒麟は幸の玉を守護する者として、一人だけ人間界に留まることにした。

それから、何年もの年月が経ち麒麟はある少女に恋をした。

そしてまた、彼女も麒麟に恋をした。

麒麟はその少女と生きていく為に、己の妖怪としての力を捨て、全ての力を幸の玉に注ぎ込み、人間として生きることを選んだ。

そして麒麟と少女は結婚し、後に、

「私達は幸の玉を守護する一族である。」

と宣言した。

しかし、麒麟の力が注ぎ込まれている幸の玉はとても大きな力を発し、それを目当てに盗みを働こうとするものも少なくはなかった。

そして数十年もすれば今まで人間として生きてきた麒麟は歳をとり、少女を残して死んでしまった。

少女は麒麟の死後もそれを己の天命とし、一人で玉を守り続けた。

そして、彼女もまた数年後に麒麟の後を追うように死んでしまった。

だが、彼女は死に際に、

「私が死んだら、私の体と共に幸の玉を燃やしなさい。
私の魂は幸の玉と共にある。
私は何度生まれ変わっても玉を守り続けます。
これは神に与えられた私の天命。
私は何度も何百年も生まれ変わり、一族の魂と共に玉巫女として生き続ける。」

彼女は息絶えた。

彼女は玉を守り続けるのを己の天命とし、一族の魂と己の魂は一つである。

という意を示した。

そして、彼女は自分の子孫の魂と共に生まれ、玉を今まで守り続けてきたという……。