【雪side】

「……なぁ、最近アイツら、夏祭りの日から仲良くねぇか?」

俺はそう焔に問いかける。

「ほんとだよな~!飛鳥も麗華に素で話すようになったし、きっと夏祭りににかあったんだろ。」

そう。あの夏祭り以来、麗華と飛鳥はかなり仲良くなった……と思う。

夏祭りの日も最後に合流したとき、手も繋いでいた。

そのとき、なにかが痛かった。

殴られたとか、そういう痛みじゃない。

心臓のあたりがチクッとするような……。

変なものだ

それを焔に話すと、

「ふーん、それって恋じゃねーのか?」

恋……?人間の女に?俺が?

「それはないな。」

バッサリと否定する。

「ふーん、そっかそっかそんじゃあ、まだ雪はライバルじゃないわけだ。」

「え?」

ライバル……?

何を言っているんだ、コイツは。

「えらく不思議そうな顔してるな。そんじゃ、一つ教えてやるよ。俺は麗華の事が好きだ。」

当たり前のように笑顔でサラッという焔。

「お前、それがどういうことか……!?」

驚いた。

だって、あいつは人間で俺達は妖怪。

本来、人間と妖怪は相容れぬ存在同士なのだ。

それに、例えかなったとしても人間と妖怪とでは生きる時間が違いすぎる。

人間からすれば俺達妖怪の生きる時間は長すぎて、俺達妖怪からすれば人間の生きる時間は短すぎる。

お互いが結ばれようとしても悲恋となる。

「ああ、分かってるさ。」

「なら何故……!」

うーん、そーだなぁ……、と一息ついてから焔は言った。

「簡単に言うと一目惚れだよ。麗華に初めて会って、可愛いなぁ~って一目惚れして、一緒に過ごすうちに麗華のことがもっと好きになっていったんだ。アイツが人間で俺が妖怪。叶うことのない気持ちってことくらい分かってる。」

でも……と、続ける焔。

「恋にきっと理屈なんてないんだよ。人間も妖怪も皆それぞれ心を持ってるんだ。妖怪が人間に恋をしても、人間が妖怪に恋をしても全然不思議じゃない。まぁ、好きになっちゃったんだから仕方ないな、みたいな?」

焔らしい真っ直ぐで簡単な答えだった。

「あっそ。」

コイツには、焔にはとことん呆れる。

「あっそ、ってなんだよ~。結構真面目に答えたんだからな!」

そういってむすっとした顔をする焔。

俺はそれをスルーする。

恋……か。

そんなものは今まで一回もしたことがない。

でも、この胸の痛みが焔のいうとおり恋ならば。

俺は麗華を……?