さくら、さくら

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それから金魚すくいや射的、ヨーヨー釣りに盆踊り。

それに、美味しいものもたくさん食べた。

焼きそばにたこやき、わたあめに林檎あめ。

かなり満喫したと思う。

残るはお祭り最後のラストイベント、打ち上げ花火!

「碧、花火見るの楽しみだね!…………って、あれ……?」

って話しかけると。

碧がいない。焔たちもいない。

まさか……!サァーっと血の気がひく。

そんな。こんな大勢の人混みの中で。

「はぐれた……?」

とにかく碧に電話してみよう……。

人混みを抜け出し、人気の少ない川原近くに出る。

プルルルルル、プルルルルル。

「おかけになった電話は繋がりませんでした……。」 

駄目だ、繋がらない。

だとしたら、自力で探すしか……。

でも、こんな大勢の人がいる中で碧達を探すのは恐らく無理に等しい。

どうしよう……。

「あの……。」

考えていると後ろから声をかけられた。

「少しお伺いしてもよろしいでしょうか……?」

「あ、はい!いいですよ!」

その人はとても綺麗な人で、口調も丁寧。

浴衣を着てるからきっと、お祭りに来た人なんだ。

その人は地図をだして、

「ここまでの道を教えていただきたいのですが……。」

と、地図の場所を指で指す。

ん~、この場所だったら結構近いし、この女性をつれていってあげられそう。

「それじゃあ、私ここのところまで道案内しますね!」 

「お願いします。」

ということで、道案内をしている途中。
その女性が向かっている場所って結構、裏道ばかり通る。

細くて暗い路地に差し掛かったとき、いきなりその女性が歩く足を止めた。

「?」

どうしたんだろう。

その女性は足を止めたままずっと黙っている。

「どうかしたんですか?ぐっ……!?」

ドンッガッ

すごい勢いで床に叩きつけられ、手で首を押さえつけられる体勢になった。

「!?」

そこにはミシミシと音をたて、女性の皮を脱いでいる巨大な蜘蛛がいた。

さっきの綺麗で優しそうな女性の面影はもうない。

「玉を……渡せ……。」