さくら、さくら

ふーん。

命が狙われている。

つまりは、死ぬかも知れない……。

「そこで、だ。嬢ちゃん。俺達から一つお願いがあるんだが、聞いてくれるか?」

お願い?

私は首を縦に振る。

「俺達に嬢ちゃんを守らせてほしいんだ。」

「……守る?」

「ああ、そうさ。嬢ちゃんが玉を持っていなくても、いろんな妖怪は嬢ちゃんから玉を奪おうと、嬢ちゃんの命を狙いに来る。だから、俺達に嬢ちゃんを守らせてほしいんだよ。」

それに、これは俺達の使命でもあるから、と言われた。

それって、どういう……?

「それでな、嬢ちゃんは、俺達が誰かわかるかい?」

と、話題がすぐ切り替わった。

首を横にひねる。

あなた達と私は初対面なのにわかるわけないでしょ!

「そっかぁ~。」

あれ?結構落ち込んでる?

「やっぱりわかんないよなぁ~……。俺達、実は……。」

実は……?

「嬢ちゃんのクラスメートの雷門と暁と潮と氷蓮と山伏なので
す!」

ドヤッと言わんばかりに瞳をキラキラさせて言う彼。

「……は?」

だってこの人達は妖怪、あの人達は人間。

「嘘でしょ?嘘だよね?」

すがるような言い方になる私。

「嘘じゃねーよ!だって変化すればちょちょいのちょ~いで、簡単に人間の姿になれるからな!それに、妖怪って結構人間界に馴染んでるやつは沢山いるんだぜ?」

どうだすごいだろ、と言わんばかりのドヤ顔。

「へ、へぇ……?」

曖昧な返事になる。

それに……。

皆が私のクラスメートって、私に直接暴露してもよいことなのか!?

……ってことは私を嬢ちゃんと呼ぶ彼は……。

「ってことはあなたは……鬼羅君ですか……?」

おそるおそる聞いてみる。

「おう!大正解だぜ!俺は鬼の鬼羅ってんだ!」

額に角を二本ちょこっと生やし、右耳に金色のピアス。

ショートの茶髪。

チャラいウインク。

そうか!

このチャラチャラしたウインクに見覚えがあるなぁ~って前に初めて会ったとき思ったのは鬼羅君のだったのか……!

「お、お、お、俺は妖狐の暁 焔!」

長い腰くらいまである綺麗な銀髪に獣耳、赤色の瞳。

テンパってて可愛いなぁ……。

思わず和む。
「僕は人魚の潮 渚だよ。」

海のようにすんだ綺麗な青の瞳に、クリーム色の髪を簪でまとめ、天女のようなきらびやかな服をまとっている。

なんだか、お姫様みたい。

「狼の雪。」

結構性格も見た目もサバサバしてるのかな……?

獣耳に、無造作に伸ばした茶髪を後ろにくくりあげ、民族衣装みたいな服を着てる。

「天狗の飛鳥。」

高下駄に、黒く大きな羽根、鼻の長い赤い天狗の面をつけて錫杖を持っている。

でもさ……。

あんまり実感がわかないなぁ。

命を狙われている、なんてそう簡単に言うけど……。

「ん?今思ったけど、嬢ちゃんは妖怪怖くないのか?」

怖い?別に怖いわけじゃない。

怖いわけじゃないんだけど……。

いっつも妖怪とか見てるし……。

慣れてるって言う方が合ってるのかな?

「慣れてる……みたいな……?」

少し疑問形な言い方になる。

「ふーん、そっかぁ~。度胸がすわってんだな~、嬢ちゃん。」

そ、そりゃどーも……。

「でも!これからは俺達が嬢ちゃんのボディーガードってこった!だから大船に乗った気で安心してくれ!」

満面の笑顔でそう言われた。

私は特に守ってほしいなんて頼んでいないけど、なぜかソレを前提に話が進んでいる気がする。

でも……、守られて損はないよね!…………多分。