赤に染まる指先

そうやって生きる今の私を、あなたは呆れるだろうか。


…呆れてくれることすら、してくれるのかな。


私のことなんてもう、記憶の中から消しちゃったのかな。


写真も、メールも、アドレスも、SNSも。


全部、全部、消しちゃったのかな。


私があなたといた証なんて、もうどこにもないのかな。


爪に重ねたこの色しか、ないのかな。



やだ。


やだ、そんなの。


私ばっかり、あなたでいっぱいなのに。


今も思い出に縋って、あなたに縋って息をしているのに。


あなたは忘れてしまうなんて、あなたは苦しまないなんて、そんなのずるい。


ずるい、ずるい。


何度も何度も心の中で繰り返す。


けれどそれを直接あの人に言う手段も何もなくって、空しくて振り上げた右手を枕に叩き落す。


ぼす、と枕は衝撃をいともたやすく吸収する。



もう、眠ろう。


時計の針は午前3時を指している。


明日の授業は何時からだっけ、とぼんやりする思考回路で思い出してベッドにもぐりこむ。


目をつむるとあなたの微笑みが浮かんでくる。


やっぱり好き。


大好き。


おやすみ。


私もあなたに微笑みかけて意識は眠りの底に落ちた。