赤に染まる指先

私はだるい体を起こしてベッドから降りる。

テーブルに置いていたマニキュアの小瓶を手に取った。



ああ、もういっそ。


染めて


染めて



染まってしまえばいい。



爪も、指も、足も

骨も、血も、肉も、脳みそも、

神経も、精神も、感情も、意識だって、


全部、全部、この赤に染まってしまえばいい。



あなたが好きだと言った、血の色みたいな赤に。



そしたらきっと。


きっと、私は私を、今より好きになれるかもしれないのに。



染まらない。


染まってくれない、この体は。


何度塗っても、色を重ねても、欠けていく、割れていく。


この爪に色を重ねても、完全には染まらない。


悔しい。悲しい。


何度も何度も塗り重ねる。

乾いたのか乾いてないのか、そんなこと関係なく何度も、何度も。

ほとんど、衝動だった。