赤に染まる指先

同じ学科の、田中さん。


その人物は私もよく知っていた。


人目を惹く容姿、優しい性格。

悪いところなんてない、すごくいい人。

こんな私にまで優しく挨拶してくれるような人。


私だって、憧れる。


だから、彼女に惹かれるあなたの気持ちも分かる。

悲しいくらいに、分かっちゃうよ。


ねえ、私達好きなものが同じだね。

同じ人に惹かれてるね。

私の気持ちとあなたとじゃ、違うんだろうけど。


だからもう、ダメだね?


だって私、田中さんに勝てるわけないもの。


田中さんより秀でているところなんて、私にはないもの。


私だって、田中さんに憧れちゃってるんだもの。


捨てられて当然だね、私。


太陽が東から昇って西に沈む、その定理と同じくらい当然なこと。


そしてもう私達がダメだってことを思い知らされる。


だって、太陽が西から昇るなんてこと、ありえないでしょう?