赤に染まる指先



「今もそんなにあいつのことが好きなの?」


「うるさい!」


叫んだ。

叫んで、しまった。


まだ講義室に残っていた数人の学生が一斉にこちらを見る。

吉田は驚いた様子も見せず、ただ私を見下ろしていた。


「…ごめん」


私はそれだけ言うと講義室を出た。

吉田は追いかけてこなかった。





叫んでしまった。

やってしまった。

別に叫ばなくても良かったのに。

それは、痛いほど分かっているのに。

だけど、それでも叫んでしまったのは、図星だったからだ。

誰にも言われたくなかったからだ。

別に吉田が悪いわけじゃない。

悪いわけじゃ、ないけど。


ああ、もう。

胸の中がザラザラと音を立てる。

気持ちが悪い。

まるでマニキュアを塗るのを失敗したときみたいにむしゃくしゃする。

そして沸き上がる自己嫌悪。

ああ、もう。

吐き出すように息を吐いて、私は紙パックのミルクティーを飲んだ。

ミルクティーは喉にへばりつくようで不味かった。