「んー!」
「あ、ごめんね。追われてるから、どうか静かに」
あっ……それって、さっきの女の子たちのことかな……。
コクリと頷けば、棗くんはゆっくりと手を外してくれる。
「追われてるって、大変ですね……」
「まぁ、3年間これだからね、いい加減慣れたよ」
疲れ果てた顔で笑う棗くんに、苦労を感じだ。
大変だったんだろうな、棗くん。
「棗くん、どうしてここに?」
「あぁ、放課後の約束、美羽が忘れてるかと思って」
「放課後の約束??」
えっ、何か忘れてたっけ。
やだ、全然覚えてないっ。
助けを求めるように棗くんを見上げれば、「やっぱり忘れてたか」と言って小さく笑う。
「美羽の買い物、付き合うって言ったでしょ」
「あっ……ごめんなさいっ、すっかり忘れてました!」
昨日した話なのに、私って本当に記憶力に乏しいな。
反省していると、ポンッと頭に手を乗せられた。


