「あ、煮物そろそろ良さそうだよ?」

「あ、ほ、本当だ!もうお皿によそいますね」

「なら、俺が運ぶよ」


そう言って、私達は夕飯をソファーの前に置かれたテーブルに並べる。

クッションに腰を落として、向かいに座る棗くんと同時に手を合わせた。


「「いただきます」」


それぞれ、鶏肉のバター醤油焼きと、人参と大根の煮物、お味噌に手をつける。


「うん、すごい美味い……美羽って、天才だ!」

「え、そんな大げさだよっ。こんな物で喜んでもらえるなんて、こちらこそ作ったかいがあります」


褒められるのが照れくさくて、私は少しだけ俯いた。


「こんな物なんかじゃないよ、美羽。美羽はすごい、こんなに美味しいご飯が作れるし、誰より優しい」


「でも、こんなの私じゃなくても出来るし……」


「少なくとも俺は、美羽のご飯以外でこんなに嬉しい気持ちにはならない」


また、棗くんはまっすぐに私を見つめる。

どうしてだろう、どうしてこんなに真剣に伝えてくるの?